大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)3949号 判決

第一点(1)本件起訴状の作成名義人は豊島区検察庁小島力とあつて検察官検事の部分が抹消せられておることは所論のとおりであるが、刑訴規則第五十八条第一項には官史その他の公務員が作るべき書類には、特別の定のある場合を除いては年月日を記載して署名押印し、その所属の官公署を表示しなければならないと規定しておるのみである。しかるに本件起訴状には昭和二十五年五月十五日と記載ある外前記の通り小島力の所属庁を表示した上同人が署名しておること明白であるから進んで起訴状について特別の定の有無について調査するも起訴状に官職を記載すべき旨を定めた法令はないから本件起訴状は所論法条に背反するものでない。なお右小島力が前掲庁の検察官事務取扱検察事務官であることは原審記録中第一回公判調書その他の記載に徴し明白であるから本件起訴状は実質的にも有効なものであること疑ない。故に本件公訴を棄却しなかつた原判決は相当であつて論旨理由ないものである。

第三点所論刑訴規則第二十九条第二項は共犯者である共同被告人については常に同一弁護人の弁護を禁止する法意であるとは解せられない。蓋し単独犯行であるか共同犯行であるかという一事のみで常に当該共同被告人の利害相反するものであると断ずる訳にはゆかないからである。その所謂利害相反するとは、これらの共同被告人の主張が他の者に対し敵対感情(ホスタイル・フイーリング)に支配されておると認むるに足る事実を含むか、又は少くとも、実質的に不利益であると認められる事実を含む場合に限ると解するのが相当である。ところが本件に於ては、原審公判調書並びに原審が取調べた証拠に現われた如何なる部分にも前掲のような事実は認められない。例えば第一、二回公判調書の記載に徴すると、被告人は本件犯行を自已の単独犯行であるという趣旨の答弁をしておるし、他の無罪となつた原審相被告人はいずれも本件に無関件である旨の答弁をしておる。その他本件記録を通じ他の原審相被告人の主張には被告人に対する敵対感情の現われがないのは勿論不利益に帰するような点を発見できない。蓋し共犯者であるとして起訴せられたものの中一名が単独犯行であると主張し他の者が共犯関係を否認すること自体はその単独犯行者にとつて何の不利益もないからである。しかも他方刑訴規則第二十九条第二項は所論のように共同被告人の利益共同の場合でなければ同一弁護人を附してはならぬという法意でないことはその規定の文詞上明白である。従つて、原審が被告人並びに原審相被告人のため同一弁護人をして弁護せしめても違法ではない。論旨理由ないものである。

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